令和6年9月9日
【令和6年第5弾
 
― 自民党総裁選について ―
「おごらず」が連立の原点

 

〇自民党総裁選の日程が、9月12日告示、同27日投開票と決まりました。今回の自民党総裁選は、派閥解消後に行われる初めての総裁選です。派閥のくびきから解放された結果、若手、中堅、実力者の方々が名乗りを挙げ、党改革やこれからの日本の在り方について活発な論議が展開されています。

 この度、毎日新聞社から「自公連立について」、共同通信社から「自民党総裁選を問う」という命題でそれぞれ取材を受け全国に配信されました。折から野党の代表戦もたけなわです。連立を組む公明党の観点から、今回の総裁選を考えてみたいと思います。

                 記

Q 派閥裏金事件を受け自民党や自公連立政権の支持率は低迷しています。単刀直入に言って新総裁にはどんな人が望ましいですか。

A 
〇 公明党として、どなたが望ましいか、申し上げることは控えたいと思います。そのうえで申し上げるならば、「刷新感のある人」が望ましいと思います。この人ならば「自民党を変えてくれる」「日本の政治を変えてくれる」と期待される人です。

〇 何億円もの裏金を作っておきながら「秘書がやった、自分は知らなかった」と言って責任を秘書に押し付け政治家が誰も責任をとろうとしない、こんな自民党に国民が愛想を尽かせるのは当たり前ですよ。自民党に対する信頼は地に落ちたといってよい。私は、2009年の政権交代が再来するかのような、緊迫した雰囲気を感じています。
 今回の総裁選は、失った国民の信頼を回復する最後の機会と覚悟を決めて、候補者同士の活発な論戦によって、国民の理解と信頼を取り戻してほしいと思います。

Q ところで、退陣表明をした岸田政権の3年間をどう評価されますか。

A 
〇 一言でいうと「政権の柱が見えなかった」という事ですね。退陣表明された時、地元広島の方が「岸田さん何をされたんでしょうかね」とインタビューで答えておられたのが印象的でした。真面目な方だけに、時々刻々に起きる全ての事柄に対応したため、対症療法的、現実対応型になってしまったのでしょう。

〇 しかし、首相が就任時に訴えた「成長と分配の好循環」は当を得ていました。また、少子化対策も待った無しの課題です。ただ、「異次元の対策」ですから、財源については正直に確信をもって国民に「負担をしてほしい」と語ればよかったのではと思います。

Q 改正政治資金規正法が6月19日参院本会議で可決・成立しましたが、どのように評価していますか。

A 
〇 結論から申し上げますと、今回の改正によって「公正な政治の実現のために『政治とカネ』を国民監視の下に置く」という政治資金規正法の目的は大きく前進したと評価しています。

〇 改正内容は、大要次の4項目です。@政治資金パーティー券購入者の公開基準を、現在の「20万円超」から「5万円超」まで引き下げる。A政策活動費の使途公開を義務付ける。B連座制の強化。C政治資金を監督する第三者機関の設置を義務付ける。

 ・政治資金パーティー券購入者の公開基準の引き下げによって、政治資金の透明性が確保されます。・これまで政策活動費の使途は、政治資金規正法では公開の対象になっていませんでした。自民党は、1年間で10億円以上の政策活動費を支出していますが、何に使われたのか、その使途は全く「闇」です。今後は、1円以上全ての使途を公開し、国民の前に明らかにするよう義務付けたのです。・国会議員に自身の政治団体の収支報告書を確認する義務を負わせ、確認を怠って不記載や虚偽記載があった場合には、刑事処罰され公民権停止となるよう「連座制の強化」を致しました。これによって、今後「秘書が、秘書が」という言い逃れは許されません。・政治資金を監督する独立した第三者機関が実践されれば画期的な改革になります。

〇 なお、改正内容について二点、私の要望を述べたいと思います。
1点目は、政策活動費の公開が「10年後」になっている事です。国民感覚から、10年は長すぎます。翌年に公開することが原則です。
2点目は、政治資金を監督する独立した第三者機関の具体的制度設計はこれからです。改正法の施行日は、2026年1月1日です。施行日までに与野党の合意形成をしっかり図ってもらいたいと強く要望します。

〇 @からCを含む改正法の国会成立は本年6月ですが、この内容は、既に公明党が1月18日に政治資金規正法改正案として提示していた内容です。当時自民党は、この内容に消極的な態度でした。しかし、政治資金の「透明性の確保」と「罰則の強化」は、政治の信頼回復のためには不可欠な改正です。私は、ブレない公明党の信念と努力に拍手を送りたいと思います。

Q岸田政権下では、自公の軋みが目立つようになりましたが、どのように感じていますか。

A自民党と公明党は、当然のことですが政党として生まれも育ちも違います。互いに認め合い、譲り合い、尊敬し合う精神が大切です。自分の党の事ばかり強く言っては駄目ですね。
 私が国対委員長だった時、自民党の二階国対委員長に「国対は、何か問題が起きたときに会うのではもう遅いのです。問題が在ろうと無かろうと毎日『会っている』ことが大事です。毎朝8時に会いましょう」と言われました。以来、自公の国対委員長は、毎朝8時に国会で顔を合わせていました。この関係が、実に3年間も続くのです。
信頼関係の構築は、先ず「会う」ことから始まるのですね。信頼関係があれば、どんな難問でも乗り越えて行けます。

Q 大島国対委員長と漆原国対委員長のコンビは「悪代官と越後屋」で一世を風靡されましたが、後輩に注文はありますか。

A 両党とも、要所・要所で日々ご苦労されていることに心より敬意を表します。
 ただ、自公共に若い議員が増え、野党転落時の辛い経験を知る人が少なくなりました。また、「安倍1強」時代が長く続いたため、いつの間にか議員の心に慢心や傲慢が芽生え、国民感情から遊離してしまった。
 2012年12月に政権を奪還し再び政権を担当する際に「決して驕ることなく、真摯な政治姿勢を貫くことによって結果を積み重ね、国民の本当の信頼を取り戻さなくてはならない」と連立合意書に書き込み出発しました。その精神を忘れてしまったのではないかと危惧しています。経験を伝えるべき議員が引退し世代交代が進んだとしても、自公共にこの連立の原点に立ち返ることが大事だと思います。

以上

2024年9月9日

元公明党国会対策委員長  漆原 良夫